令和2年の建設業法改正において「建設業許可」を取得、継続するための必須要件として社会保険への加入が義務付けられました。加入義務は、建設業許可の有無にかかわらず発生します。
今回は、社会保険加入が義務付けられた背景と事業者が負うべき義務や将来を見据えた対策について解説します。
建設業法改正前では、個人事業主の方や中小零細規模の事業者は社会保険未加入が少なくありませんでした。その結果、医療や年金といった社会保障を受けられず、不安定な生活環境が問題となりました。また未加入業者は社会保険の負担がない分、安価な入札が可能となり、適正に加入している事業者が競争上不利になるという不公平さが生じていました。更には福利厚生が不十分なことで、若手の雇用や技能の承継が減少し、人材確保に影響を与えました。
社会保険は、下記の3つの保険を総称した保険になります。
・健康保険・・・・・・病気やけがの際に医療費の保障をする制度
・厚生年金保険・・・・老後の生活に備えるための年金制度
・雇用保険・・・・・・失業した際の給付や育児休業、介護休業中に給付をする制度
社会保険未加入には、様々なリスクとペナルティが伴います。
・新規許可・更新が認められない
加入義務があるにも関わらず未加入である場合、建設業許可の新規取得や更新が認められません。
・経営事項審査(経審)での減点
経審の評価項目の一つである「社会性等(W点)」では、社会保険の加入状況が評価されます。未加入と判断された場合は、各保険ごとに大幅な減点が課され、総合評点値に大きなマイナスを与えます。
・入札参加資格を失う
経審の通知書などで社会保険の加入状況が確認されます。その結果、入札参加資格の申請を受付けてもらえない、あるいは資格審査で不適合と判断されるケースがほとんどです。
・行政からのペナルティ
未加入が判明した場合、年金事務所による立入調査や指導が入ります。指導に従わない場合は、加入のみならず過去に遡って保険料を徴収される場合があります。また悪質な場合、懲役や罰金が科される可能性があります。
・元請業者もペナルティを受ける
国土交通省は「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」←社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン を作成しており、元請業者には下請業者の社会保険加入状況を確認・指導する義務があります。
元請業者がこの加入状況の確認・指導をする義務を怠ったり、下請業者が社会保険未加入であった場合、元請業者にもペナルティが科されます。ペナルティは指名停止処分、工事成績評定の減点、制裁金などが挙げられます。
・加入義務の正確な把握
法人か個人事業主か、従業員数、就労形態などにより加入すべき保険は異なります。
自社の状況を正確に把握し、加入義務があるかどうかを確認しましょう。
・適切な手続きの実施
健康保険・厚生年金保険は日本年金機構に届出が必要であり、雇用保険についてはハローワークに届出が行い、加入手続きを進める必要があります。
・法定福利費の確保
社会保険料は、事業主と従業員が折半して負担します。法定福利費を適切に見積り、原資を確保することが必要です。
当事務所では社会保険労務士等の専門家を通して社会保険に関するご相談、申請を承ります。
今回のコラムで自社の社会保険の把握と見直しを検討されたい方、また新規建設業許可申請を検討され、社会保険加入状況について確認したいという方は、是非、当事務所へご相談下さい。
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